考えさせるという罠

 

今、指導者の方針として多いのが

「選手が主体的に、能動的に動くこと」

を目標とする傾向にあると考える。

 

日本に根深く蔓延っていた、体罰や命令で人を動かしていく、軍隊的な練習法からの脱却をしていくような流れになっていると思う。

 

実際、私の教えている沖縄県の中学生カテゴリーでもこの指導方針は少しずつ広まっているが、先生方の知識のアップデートが遅いとつくづく感じている。

 

まだ、半軍隊的な練習をしているチームもあるし、生徒が何も発言せずただ「はい!」と威勢良く答える選手も多い。

 

 

たまに他のチームにお邪魔して、そのように理解していないが、返事は威勢のいい選手には少し意地悪をして

「今言ったことを3つぐらいポイントにまとめるとどうなる?」

 

と言ってみる。すると急に目の色を変えて考え始める。

 

「理解してないなら、はいって言わなくていい。分からないならどんどん聞いて」

 

と言いはするが、多分監督はそのように質問させるような教育をしない人だからこうなっているのだなと思っている。

 

 

指導者の方も、アップデートしている人だと質問を投げかけて考えさせるようにしていると思う。

 

代表的なのが、生徒に質問をして答えさせると言うことだろう。

 

だがそれは、ほとんどの指導者が選手に質問を投げかける場合は

 

「指導者の考え当てゲーム」

 

をしている場合が殆どなのであると考える。

 

「考えさせる」より「指導者の持っている考えを当てるゲーム」をしている感覚が近いのだ。

 

要は「考えさせる」と言いながら、「自分の考えを当てさせる」ようにしているだけだと言うこと。

 

例えば、「ブロックで一番大事なポイントは?」と指導者が聞くとする。

 

選手は「得点を奪う!」とか「プレッシャーをかける!」とかいろんな意見が出てくる。

 

だが、指導者の言うことの多くは、

 

 

「それも大事だけど、一番は〜」

 

とか

 

答えが出て「そう!それ!」

 

と言うかのどちらかである。

 

私は現役時代にそういった指導者に対して

「自分の考えを当てさせたいだけなんだな」

と思っていた。

 

多分今の選手もそう思う人が多いだろう。

 

答えはいくつもある。

 

「考えさせる」という教育理念ではそのような質問の仕方、答え方は間違っているのではないかと考える。

 

私が考える質問の仕方としてベストだと思うのが

 

1.考えさせたい場合は絶対に、選手の出した答えに対してリアクションすること。(頷くなど)

 

2.肯定も否定もしない。受容するのみ。

 

3.自分の言いたい意見はあくまで自分の考えであり、他に正解はあるということ。

 

を私は徹底している。

 

要は

【考えることを重視したいなら、ありのまま思考させるのが大切。指導者が前もって答えを準備している時点でナンセンス】

ということ。

 

 

【ある程度、答えは持ち合わせるがそれだけが全てだというニュアンスで言わないこと】

と言った方が正しいだろうか。

 

考えさせるということは、答え当てゲームではない。日本の答え当て教育をしてきた影響でそれは根深いと思う。

 

正解を言わせるとか、それっぽいことを言わせるのが「考える」ことの本質なのかということ。

 

あくまで「指導者の私の意見」として言うことが必要であり、

「他に答えはあると思うから、思いついたら私に言ってね!」くらいの気持ちで言わないと、選手が思考を停止してしまいかねない。

 

 

まとめると

 

1.考えさせているようで、指導者の考えを当てさせている現状があるということ。

 

2.そして選手はそのような答え当てゲームに疲れているという事。

 

 

「考えさせる」ということを改めて考え直していかなければならない。